ある日、俺の前にニコニコと笑った悪魔がやってきた。
「ああシリウス、こんな所にいたんだね。ところでさ、僕のハチミツチョコレート知らないかな。ハニーデュークスの新作をこの間買ってきてそのまま置いておいたんだけどいつの間にかなくなってたんだよね。僕あれ食べるの凄く楽しみにしてんだけど一体どこにいったんだろう。もし誰かが食べたとしたらどんな呪いがいいと思うシリウス。…え?そこまでしなくてもだって?何言ってるんだいシリウス。僕のお菓子を無断で食べた勇敢な生徒なんだよ?そんな勇敢な生徒には呪いを贈ってあげるのが一番じゃないか。毎晩寝るたびに体はナイスバディなんだけど顔だけセブルスな人が全速力で追いかけてくる夢を見させる呪いとかがいいかな。それとももっと酷い内容の呪いの方がいいかな。あ、それでシリウス。僕のチョコレートは?」
リーマスは背中にドス黒いオーラを背負ってた。
アイ キャン ノット
「それでその後シリウス先輩はどう答えたんですか?」
「…お前、あそこで『俺が食べました、すみません』って言える奴がいるとでも思ってんのか?そんな事言った日にはそいつはその瞬間から呪いで苦しむ事になるな、絶対」
「…要するに真実は言ってないって事ですよね…」
「言ったら間違いなく殺される…」
くっそー!俺はどうしたらいいんだー!!と言って座りながら頭を抱えたシリウス先輩。今回ばかりは助けようがない。
「(でも最後に『僕のチョコレートは?』って言うくらいなんだからリーマス先輩は犯人がシリウス先輩だって解ってたんだろうなー)」
「…たっく!たまに菓子なんか食うとコレだ!」
「いや、今回の事は別にお菓子に非があったわけじゃ…」
つまりは、だ。目の前にいるこの自分の密かな想い人である先輩は、あろう事か誤ってお菓子大好き人間なリーマス先輩のチョコレートを食べてしまったらしい。いつもはお菓子なんか食べない目の前の先輩がどうしてその時ばかりは食べてしまったのかは謎。
「う〜ん…とりあえず代わりになるようなものを買ってきたらどうですか?もしかしたらリーマス先輩も許してくれるかもしれませんよ」
「…そうだな」
次の日シリウス先輩はお忍びでホグズミートまで行って、大量のお菓子を買って戻ってきた。もしかして、あれ全部リーマス先輩にあげる気なんだろうか?そんな事したらいくらリーマス先輩といえど糖尿病になるんじゃ。
「シ、シリウス先輩!それはあげすぎなんじゃ…」
「いーや、リーマスにはこんくらいが適量な筈だ」
「これが適量!?どう考えてもこれだけあれば一年間はお菓子を買いに行く必要がなくなりますって!」
「あいつはこの量を毎回毎回一週間で食いきる」
まさか。この量を一週間でというのはいくら何でもありえないだろ。いや、でももしかしたら、という事も。実際リーマス先輩が極度の甘党だという噂は二つ年下の自分の学年の話題にも出てくる。
「っと、来たな。…お、おいリーマス」
「あれ?二人してどうしたの?」
ニコリ、と微笑みながらそう問い掛けてきた目の前の鳶色の髪の先輩。
「(…か、確信犯だ!)」
シリウス先輩は気付いてないだろうが、この人は確信犯だ。だって今目が明らかにシリウス先輩の持つ袋をシリウス先輩には気付かれない様に嬉しそうに見たもん。
「あー…そのー…この前のチョコの話しだけどよ。…その、なんだ。お前結構がっかりしてたように見えたから、さ。これやるよ」
目を泳がせながらシリウス先輩は両手一杯にさげていたお菓子が沢山詰まった袋をリーマス先輩の前に半ば突き出ように出した。最後まで自分が食べた事を隠し通す気なのか。もうこの鳶色の髪の先輩にはバレきっているというのに。
「(まだシリウス先輩、リーマス先輩が犯人を知らないって思ってるんだ)」
「わー、ありがとうシリウス。これで一週間は幸せに過ごせるよ」
「お、おう」
「(本当に一週間で食べ尽くす気だこの人!)」
「…それじゃあこのお菓子のお礼に」
受け取ったお菓子の袋の内一つをがさごそと覗いていたリーマス先輩が顔をあげた。ニッコリ、と効果音がつきそうな程微笑んでいる。けれどそれは純粋で無垢な笑顔とは正反対のものだった。
「シリウス、君へかける呪いは見た人全員が女装したセブルスに見える呪いに格下げしておいてあげる」
「………え?」
「じゃあ、そういう事だから。あ、。後で一緒にこのお菓子食べよっか」
「…は…はい…是非…」
ニッコリ、とそう言われたらそう返すしか私の頭には思い浮かばなかった。隣ではシリウス先輩が岩のように固まっていた。
シリウス先輩、ご愁傷様です。
私には貴方を助けられるだけの力がありません
(先輩後輩設定でした。シリーズ化したいとかひそかに思ってたり…。)
08.08.22